解決事例・ケーススタディ

不動産の相続ケース

ケース

亡父は、自宅の土地建物のみを遺して亡くなり、自宅については兄が相続し、弟は遺産の2分の1に相当する金銭を兄に支払ってもらうことになった。しかし、兄の提示した金額は、周辺の不動産価格からすると低かったので、納得できない。

当事務所の対応

次男からのご依頼に対し、不動産価格の調査を行ったところ、長男の提示した金額は路線価を基準に算定したものであり、実勢価格と比べ、低い金額であることが判明しました。そのため、不動産鑑定士の協力のもと、適正な不動産の評価額を踏まえつつ長男との不動産価格の協議を行いました。

結果

長男が当初提示した金額を大幅に上回る金銭の支払いを受ける遺産分割協議が成立。

ポイント

本件は、相続財産である不動産を一人の相続人が相続し、他の相続人が不動産の価値の法定相続分に相当する金銭の支払いを受けるという代償分割を行う場合に、どのように不動産価格を算定するべきかという事案です。一般に、路線価は、不動産売買価格(実勢価格)と比較して低くなりますので、路線価を基準として算定した場合と実勢価格を基準にして算定した場合とでは、代償分割において支払われる金銭の額も大きく異なります。このような場合、鑑定評価をとることのコストを考慮しつつ、必要に応じて、鑑定評価をとることになりますが、その結果、適正な実勢価格を基準とした金銭の支払いを受けることができる場合があります。

遺産分割で揉めたケース

ケース

認知症を患っていた母の介護を次女が1人で行ってきた。しかし、母が亡くなったとたんに、もう1人の相続人である姉が、法定相続分である遺産の2分の1を相続するので、預貯金の半分は自分のものだと主張してきた。

当事務所の対応

次女からのご依頼に対し次女の行ってきた介護の実情を具体的に聴取したところ亡き母の認知症は重度のものであり、次女の介護があったことで、本来であれば支払わなければならなかった介護サービス費用の支出を免れたものであると判断しました。そこで、姉に対して、次女の行ってきた介護に対する寄与分を主張しました。

結果

次女が行ってきた介護を寄与分として認めさせ、寄与分を上乗せした遺産分割協議が成立した。

ポイント

親の介護が寄与分として評価されるためには、当該介護が親族間の扶養協力義務の範囲を超えて被相続人の財産維持に貢献したか、すなわち特別の寄与があったかどうか必要になります。これは、単に一生懸命世話をしたというだけでは足りず、親が常時付き添いが必要なほどに要介護の状態であり、子が介護したことによって介護サービス等の費用を支出せずに済んだという事情が必要となります。そのため、亡き親の生前の認知症の程度や介護の必要性の程度、子の介護の状況等、具体的事情によって寄与分が認められる場合があります。

遺言を争ったケース

ケース

長男は認知症の母と同居していたが、母の死亡後、遠方に住んでいた次男が「次男に遺産のすべてを相続させる」と記載した遺言を持っていたことが判明し、次男は、遺言どおりに遺産をすべて自分に渡すように主張してきた。

当事務所の対応

長男からのご依頼を受け、同居していない遠方に住む次男が母の遺言を持っているのは不自然であったため、遺言を書いた当時の母の認知症の程度を医師に確認し、母が遺言を書いたことを争うとともに、仮に母が書いていたとしても、母は高齢かつ認知症であったため、遺言を書く能力がなかったとして、調停及び裁判で争いました。

結果

遺言は、意思能力のない母に次男が書かせたものであり、母には遺言内容のとおりに相続させる意思はなかったとして、裁判所は遺言が無効であったことを認め、法定相続分に従って遺産を分割することとなりました。

ポイント

同居していない遠方に住む次男が、自身に有利な母の遺言を持っているのは不自然ではないか、という疑義からスタートした事案です。遺言者の生前の生活状況、認知症の進行程度を調査し、遺言作成当時に母に意思能力が欠如していたことを立証し、遺言の無効が認められたものです。一般に、遺言作成時における本人の意思能力は契約書などと比べて低くても良いとされていますが、意思能力自体は必要となります。不自然な内容の遺言が発見され遺言自体の信憑性を疑う場合、認知症の進行程度を立証し、作成当時の遺言者の意思能力の有無によっては、遺言が無効となる場合があります。

遺言書を作成したケース

ケース

依頼者には、先妻との間の子どもと後妻との間の子どもが1人づついたが、お互い面識はないため、依頼者が将来亡くなった時には遺産分割の問題が生じる可能性があり、また、相続する際に発生するであろう相続税の支払いについて子供たちに不便をかけたくないことから、今の時点で遺言書を作成したいと考えた。

当事務所の対応

依頼者の希望を沿う遺言作成のために、複数回の打合せを行い、依頼者の希望のとおり、現在の相続人の生活状況や、相続する際に発生するであろう相続税の支払い等を考え、先妻との間の子ども(女性)は、既に結婚して1戸建の家に住んでいるので株式は先妻との間の子どもに相続させることとし、自宅は後妻との間の子どもに相続させることとし、預金については相続税支払いに備えて半分ずつ相続させる内容で弁護士にて遺言の文言を作成して、公正証書遺言を作成しました。そして、遺言作成のみではなく、遺言信託として作成した遺言を当事務所で保管し、依頼者が亡くなった場合には、遺言に沿った遺産分割が行えるようにするため遺言執行者となることになりました。

結果

依頼者が亡くなった際、相続人である2人の子供に対して、亡き父が相続人の生活状況や父の亡くなった後の相続税の支払い等を考慮して、遺言を作成したこと等、亡き父の相続人らに対するお気持ちをお伝えしたところ、相続人らは遺言の内容に納得され、遺言通りの遺産分割が成立した。

ポイント

遺言を作成したとしても、作成当時の遺言者のお気持ちを伝えられない場合、相続人間で相続に関して争いになってしまうケースが残念ながら多数存在します。このような亡くなった後のお子さんたちの争いを防ぐためにも、遺言作成のみならず、遺言者のお気持ちを遺されたご家族にお伝えする遺言執行者の役割は重要となります。遺言執行者は、弁護士資格がなくてもなることはできますが、相続の際の法的問題に対処するためにも法律家がなるケースが多いといえます。大切なご家族を相続争いに巻き込まないためにも、お気持ちを反映させた遺言を作成することは、非常に有益な手段となります。

遺留分を請求したいケース

ケース

亡父が遺言を遺していましたが、その遺言には、遺産を全て長男に相続させる旨記載がありました。次男である私に遺留分があると聞き、遺留分だけでも請求したいと考えました。

当事務所の対応

遺留分を請求する場合一定期間内に請求する必要があるため、次男からのご依頼を受け、速やかに内容証明郵便を送って遺留分を請求する意思があることを示した上で、その金額の協議をおこないました。 

結果

本件では、遺留分である銀行預金の2分の1を長男から受け取ることができました。

ポイント

被相続人には自らの財産を自由に処分する権限がありますので、遺言によって一人の相続人の全財産を取得させることも可能です。しかし、相続制度自体が遺族の生活保護と潜在的持ち分の精算という機能があることから、相続財産の一定割合を相続人に留保するという制度があり、これを遺留分といいます。特に、相続財産に未公開株や不動産といった価格の評価が容易に行えない資産が相続財産に含まれる場合には、専門家に相談することで適正な価格を基準に遺留分算定が認められる場合があります。

他士業との連携で対応したケース

ケース

亡父の遺産が不動産のみの場合において、相続人である長男と長女が税金の負担等も考慮しながら遺産分割したい。

当事務所の対応

不動産を売却して現金で分けるか、不動産をいずれかが取得して、他方が預貯金を取得するか等の分割方法につき、税理士を交えて協議を行った。依頼者である長女は、長男が不動産を取得することを希望するとともに、適正な時価を基準としてその2分の1の金額を受け取りたいとのことであったので、不動産の適正な時価については不動産鑑定士の意見を聞きながら協議を行った。

結果

不動産の評価額について、地価公示価格を基準として遺産分割協議が成立した。

ポイント

近年の相続税関連法の改正によって、相続の仕方によって、相続税額は大きく異なります。遺産分割協議に当たっては、相続税の負担額、相続税を支払うための現金の有無等に関する慎重な検討が必要となります。
また、本件のような不動産の代償分割にあたっては、不動産の価値をどのように考えるかがポイントとなります。不動産が貸家である場合や特殊な形状の場合には、単に路線価等を基準とするのでは適正な価格は判断できないため、不動産の鑑定評価等により慎重に価格検討した方がよいケースがあります。他方、不動産の鑑定評価をとる場合のコストを考えて、路線価や公示価格等で協議がまとまる場合には、簡易な査定書や不動産鑑定士からの意見聴取等によることも考えられます。このように、協議をスムーズに行うためには、不動産に詳しい弁護士による、税理士、不動産鑑定士等の士業と連携をとりつつ、費用負担等も踏まえたご依頼者にとっての最善の解決方法を提案を受けるのがよいといえます。